Wednesday, February 27, 2013

Klingon use CmisSync!

弊社製品CmisSyncクリンゴン語に翻訳しました。

言語リソースの翻訳はここで行われています。
翻訳作業は、自然言語と人工言語を趣味としている筆者(linzhixing)が担当しました。プログラミング言語は仕事で使っています。(主にJavaと、最近はRubyも)


[CmisSyncって?]
◆弊社の開発するCmisSyncというソフトウェアは、このブログでも既に紹介されていますが、AlfrescoなどのCMIS対応サーバとローカルPCの間で双方向の同期ができるDropbox風のツールです。

     Alfrescoに限らずMicrosoft SharepointやIBM FileNetなど、社内のECM(文書管理システム)サーバが文書をやり取りするCMISという標準規格に対応したものであれば、更新のあった文書がCmisSyncで自動的に同期されて、出先などオフライン/オンラインを問わずシームレスな作業が可能になります。


[クリンゴン語って?]

◆クリンゴン語は、SFテレビシリーズ『スタートレック』に登場するクリンゴン人が使用する架空の言語です。

  宇宙語の一種なので、ソフトウェアの多言語対応(globalization)としては地球(globe)の範囲を超えてしまっているきらいもありますが、便利なCmisSyncを、高度な情報技術を有する数多くのクリンゴン人やクリンゴン語を話す地球人の方々にも触れてもらいたいと思い、翻訳してみました。(英語と)クリンゴン語以外に、すでに日本語、フランス語、ウクライナ語などに翻訳されています。

◆ISO639(言語名コードの規格)によって、jaやenと同様に、tlhというコードが割り当てられています。OSやブラウザにもよりますが、言語コードを変更することでCmisSyncがクリンゴン語化されます。

     Windowsの場合は、コントロールバネル>>地域と言語>>フォーマットの値を切り替えると、対応する言語でCmisSyncのUIが表示されます。(直接は選択できないかもしれませんが……)

     "tlh"というのは不思議なスペルですが、これで一つの子音を表します。この発音はとても難しいので省略しますが、クリンゴン語を象徴する音で、クリンゴン語でクリンゴン語のことはtlhIngan Holと書きます。

◆クリンゴン語を言語として整備した言語学者マーク・オクランド氏が、Klingon Dictionaryという辞書を出しています。クリンゴン語の文法も単語も、事実上この本を基準とすることになります。ネット上でも、この本をなぞった解説サイトがいくつかありますので興味がある方は検索してみてください。


[Pick Up!]
Klingon Dictionaryには、約3000の単語しか含まれていません。また、クリンゴン人が戦闘民族であるためか、内容にも偏りがあるので、翻訳するときは上手い意訳・造語を考える必要があります。

そこで、翻訳が難しかったところや興味深かったポイントをいくつかピックアップしてみました。


Enterprise Content Management
     「enterprise」は難しい英語で、「組織」とも「冒険」とも少しずつニュアンスが違いますが、クリンゴン語とは実はとても相性のよい言葉です。そうです、エンタープライズ号は"enterpray"と呼ばれています。

       訳語: enterpray ngaSghach vu'ghach

Welcome to CmisSync!
  クリンゴン語は戦士の言葉なので、気安く「ようこそ」と挨拶することはありません。が、文明を有している限り(他の文明からそうは見えないとしても)挨拶に似たものは持っています。彼らの場合、nuqneH?「何か用か?」 というのが私たちのいう挨拶のようです。

     ちなみにCmisSyncのリソース多言語化にはcrowdinというサービスが使われていますが、ここで翻訳文を入力するとき、原文が"!"で終わっていれば訳文も"!"で終わっていないと警告表示が出ます。Welcome!のエクスクラメーションマークがnuqneH?のクエスチョンマークになるあたり、異文化の味わいがありますね。 

     訳語: CmisSyncDaq nuqneH?

Please…
     ヨーロッパ系の言語では、ソフトウェアのダイアログやメニューバーの「開く」や「戻る」は動詞の命令形ではなく不定詞で書かれることが一般的です。日本語でいうと「開け!」ではなく「開く」と書いてあるわけです。

     クリンゴン語でも、命令形ではなく動詞の原形を使うように訳しました。ただし、元の英語がPleaseで始まっている文章の場合は不定詞ではニュアンスが 出ません。命令形でもよいですが、クリンゴン語では何かを特に強く要請する場合、〜be'chugh bIHegh!「〜しないとお前は死ぬぞ!」という言い回しをします。物騒ですが、戦士の言葉なので仕方ありません。

     訳語: -be'chugh bIHegh!

synchronize
     クリンゴン語はよりによってsynchronizeを意味する単語がありません。CmisSyncは固有名詞だからそのままでよいとしても、これはCmisSyncの翻訳の根本を揺るがす由々しき事態です。しかし、クリンゴン語はたしかにボキャブラリに偏りがあるものの、幸いなことに強力な造語能力も兼ね備えています。名詞や動詞の前や後ろに、規則的に接辞を付けることで意味を変化させられるのです。

     たとえば、poS「開いている」に対しpoS-moH「開ける」、ja'「話す」に対しqa-ja'-qang「私は自主的にあなたに話す」など。

     rap「同じである」という動詞はあるので、rapmoH =「同じにする」=synchronize、という造語を作ってみました。さらに、synchronizationはrapmoHghachとなります。

     訳語: rapmoH

document / folder
     戦士であるだけでなく高度なテクノロジーと共に宇宙を駆ける彼らのこと、De'wI'「コンピュータ」やDe'「データ」、さらにtebwI'「サーバ」といった単語も存在しています。しかし、CmisSyncにとって重要なドキュメント/フォルダを意味する単語は見当たりません。

    ひとまずの訳語・造語として、ドキュメント=paper (eng.) =nav、フォルダ=container (eng.) = ngaSwI' としてみました。ngaSは英語の"contain"の意味で、-wI'を付けると行為者名詞にできます。

     この訳はベストではないかもしれません。クリンゴン語のフォーラムでは既に良い訳が作られているかもしれません。フィードバックをいただければ嬉しいです。

     訳語: nav / ngaSwI'


[最後に]
◆クリンゴン語への翻訳を通して、"Language is Open Source!"という思いを新たにしました。ぴったり来る単語や言い回しがないのなら自分で作ってしまえばいいのです。そのための材料(単語)もルール(文法)も公開されています。

     翻訳に使われているcrowdinは、誰もが翻訳することのできるコラボレーティブ型翻訳プラットホームなので、気軽にご参加ください。たとえ訳に自信がないところがあっても、他の人が修正してくれるでしょう。

     とくに筆者は『スタートレック』を一度も観たことがありませんので、本当のクリンゴン人はもっと自然な言い回しをしていた、などご指摘いただければと思います。

     CmisSyncはオープンソースソフトウェアで、現在も随時バージョンアップを重ねています。ぜひお使いください!

2 comments:

  1. 初めまして、クリンゴン語を勉強してるものです。
    crowdinの方に訳を投稿させていただきました。
    はっきり言って、現状では間違った訳がいくつもありますので、
    なるべく修正して頂けると幸いです。
    詳しくはお聞きして頂ければ回答差し上げます。
    ではでは。

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    1. コメントありがとうございます。
      すでにCrowdinのフォーラムで具体的な訳語についてやり取りさせていただいていますが、
      こうした新語を含む分野での翻訳は多くの方と議論してよりよいものにしていきたいと思っています。よろしくお願い致します。
      http://crowdin.net/project/cmissync/tlh-AA/discussions

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